2012年9月8日土曜日

モバイルデバイスの普及によって変わる「ライティングの作法」

以前、Webと雑誌の両メディアを運営している出版社に取材に行ったときのことです。同じコンテンツでもメディアに応じてタイトルや本文を再構成して編集すると語る担当者の方に、デバイスごとに、読者が興味を持つ記事の傾向にはどんな違いがあるのか聞いてみました。

曰く、Webでは、たとえば「ダイエット」であれば「血液型別ダイエットTips」というように、その場で気軽に消費できるコンテンツが好まれる傾向があります。そこで、タイトルはより拡散(TwitterによるRTやソーシャルブックマークなどを)されやすいように、キャッチーなものに付け替えるそうです。一方、紙メディアでは、「ダイエット」の基本が一から学べるよう、情報を体系立てて整理して知識を提供するというのが、コンテンツづくりの基本スタンスになるとのことです。

コンテンツはさらに「説明型」「話題消費型」に


特に、Webの台頭により重要性を増してきているのがタイトルと見出しです。Webコンテンツは、「検索に引っかかりやすく」「シェアされやすく」するために、どうしても「キーワードを盛り込んだ説明調に」「一読して内容に興味を持ってもらえるように」テキストを仕立てる必要があるからです。

「Webデザイナー初心者が配色スキルを高める7つの方法」

こんなタイトルを、Webの注目記事という文脈の中で目にすることが多いと思います。Web上でPVを稼ごうとすると、「Webデザイン」「デザイナー」「初心者」「配色」「スキル」「スキルアップ」「方法」といったキーワードで検索結果に表示させるために、どうしてもタイトルを「説明調」にせざるを得ないのです。

試しに、はてなブックマークの注目エントリのタイトルをいくつかピックアップしてみました。

「Webデザインの配色について学ぶときに読んでおきたい14の記事」
「ロゴデザインの参考になりすぎる厳選10サイト」
「帰宅後10分でできる!「夜遅めし」のお悩み解決50レシピ」
「スーツのジャケットをきれいにたたむ方法(動画あり)」

これらを見ると、「タイトルから本文の内容を容易に推察できること」「思わずクリックしたくなるような“引き”があること」がとても重要だということがわかります。つまり、いいか悪いかは別にして、コンテンツはどんどん「その場で」「気軽に」消費できるものへと変化しているということです。作り手として、このことを十分意識しておく必要があるでしょう。

モバイルにより意識すべきコンテンツの「可動性」


今後の作り手がもう一つ意識しておくことは「モバイルの台頭」です。「持ち運びが自在な」「非常にパーソナルな」モバイル端末により、パソコンのモニタを介して閲覧されることを前提に制作してきたコンテンツは、今後ますます、作り手の思いも寄らない場所で、シチュエーションで、方法で消費されていくことでしょう。

具体的には、一人が何台もの異なるデバイスを使って、様々な情報に接しているという状況が考えられます。こうした状況下で、作り手として、自分たちが配信する情報が、どういう経路で受け手に届き、どのようにリンクされ、シェアされ、拡散されていくのかということを常に頭において、ライティングを進めていく必要があるのです。

可動性の高いモバイル端末の普及により、コンテンツもどんどん可動性をもち、細分化されていくでしょう。これからのライティングは、そういった要素も頭に置きながら、タイトル、見出しといったコピーワーク、本文制作を進めていく必要があるのですね。