2012年11月5日月曜日

テキスト表記の「統一感」を保つためにチェックしたい6つのポイント

Webテキストをはじめとする実用文において「見た目の統一感を保つ」ことは非常に重要です。テキストの見た目の統一感が保たれていないサイトは、なんとなくコンテンツのクオリティもバラツキがあるように感じられ、ひいてはそのサイト全体の信用性を下げる要因となってしまうので注意したいところです。
表記、いわばテキストの「見た目」は、書き手の語感やテキスト入力のための環境などに依存することが多く、複数の書き手によってコンテンツが制作されるような現場では、サイト全体で統一感を保つことが難しいものです。Webサイトの制作、運用の案件であれば、サイト内の原稿の記述ルールや、表記上のガイドラインを作成し、共有することが必要ですが、この記事では、基本的なチェックポイントとして、Webサイト制作だけでなく、どんな場面でも応用可能な“表記上の統一感を保つための”6つのポイントをご紹介したいと思います。
日常的な文章作成の際にも参考にしていただければ幸いです。

2012年10月29日月曜日

「正しく書く」際に悩ましい“リニューアル問題”

前回の記事の中で、格助詞「を」と「が」の用法上の揺れについて書きました。目的語(名詞)のあとに置くことで「動作・作用の及ぶ対象」を示す助詞です。
以下の文では、目的語(「水」)に続く助詞は、「が」で受けた方がより語法に忠実であり、(1)(2)はいずれも意味が通じるものの、述語が「意志」(欲しい、〜したい)や「能力」(〜できる)、感情(好き、嫌い)に関する言葉の場合は、「が」で受けるようにしましょうというものでした。

2012年10月13日土曜日

「正しく」書くために押さえておきたい“語法”5つのポイント

文章力は総合力なスキルです。たとえば何を書くかというアイデアの「発想力」も必要ですし、対象から情報を聞き出す「ヒアリング力」も大事です。収集した情報をどのように組み立てるかという「構成力」、個々の文章の「表現力」、さらに、論理を筋道立てて展開する「論理的思考力」が備われば、説得力が増します。

では、文章力を高めるにはどうしたらよいのでしょう。一つのアプローチとして、実用文においてはまず、「わかりやすく書く」ことが大事だと思います。つまり、以下のようなステップです。

  1. 正しく書く
  2. 見た目に統一感がある(隙がない)
  3. 内容が洗練されていく

文章が読み手に「わかりやすい」と感じられるために、まず、正しく書くことを心がけていきましょう。

書く際に気をつけたい“語法”5つのポイント

「語法」とは、言葉遣いの規則や文法などの意味です。言葉の使い方に少し気をつけることで、文章のわかりやすさは向上します。ここでは、気をつけておきたい語法のポイントを5つ挙げたいと思います。

ポイント1:助詞「が」と「は」の使い分け

主語となる名詞を受ける助詞「が」と「は」は、使い分けが実に奥が深く、専門書などを読むと原理、原則がいくつも紹介されています。ここでは、覚えておくと役に立つ原則を2つご紹介します。

(1)「新情報」には「が」を使う

  • 昔々、あるところにお爺さんとお婆さん住んでいました。
  • 山田キャッチボールをしています。

上の文では、「お爺さん」と「お婆さん」は読み手にとっては未知の「新情報」なので「が」で受けています。下の文は、誰かがキャッチボールをしているのはわかるが、それが山田(=新情報)であるというニュアンスが感じられます。

一方、「旧情報」には「は」を使います。

  • お爺さん山へ芝刈りに、お婆さん川へ洗濯に行きました。
  • 山田キャッチボールをしています。

上の文では、「お爺さん」「お婆さん」は既知(=旧情報)の存在なので「は」で受けています。下の文では、山田がいることはわかる(=旧情報)が、何をしているかわからない、それがキャッチボールだというニュアンスです。

(2)従属節には「が」を使う

  • 上司風邪で欠席したので、私が代わりに出席した。

この文は、主節(=「私が代わりに出席した。」)と従属節(=「上司が風邪で欠席したので、」)という関係です。このように、従属節の中では主語(=「上司」)を受ける助詞には、「が」を使うのが原則です。

ただし、例外があり、「〜けれど」「〜が」「〜から」といった従属節の中には、「は」が使われることがあります。

  • 上司欠席したけれど、会議を進めよう。

一般的に、「が」はどちらかというと限定的、事実を淡々と述べる際に使うイメージ、「は」は、もっと広く文章全体の主題(何について述べているかというテーマ)にまで及ぶと覚えると便利でしょう。

ポイント2:接続助詞「が」を使いすぎない

接続助詞に「が」という言葉があります。

  • Web担当者が「会社が新卒採用を見送る」と掲載して問題となったが、実際には、人事部の担当者による誤った情報を確認せずに掲載していたのだ。

上記の文は、一見、何の問題もないように見えますが、「問題となったが、」の「が」は逆接の意味で使われる接続助詞です。これは、逆接、つまり前後で内容が逆転する場合にのみ使わなければなりません。「Web担当者が情報を掲載した事実」と、「人事部の情報を確認せずに掲載していたこと」の間には逆接関係はないので、以下のように書く方が語法に忠実です。

  • Web担当者が「会社が新卒採用を見送る」と掲載して問題となった実際には、人事部の担当者による誤った情報を確認せずに掲載していたのだ。

「が」という接続助詞は便利なのでついつい多用してしまいがちですが、濫用しないよう注意が必要です。

ポイント3:助詞「で」と「に」の使い分け

主語となる名詞を受ける「で」と「に」は、いずれも場所を示す助詞です。「で」は動作性の強いニュアンスが、「に」は状態性の強いニュアンスがあります。

(1)人の意志による行動は「で」で受ける

  • 三連休の初日、すでに多くの人が駅のホーム並んでいる。
  • 念願の一戸建てを鎌倉購入した。

上の文で、並んでいるのは「人」つまり意志が介在しているため、「で」で受けるのが文法上は正しい使い方です。同様に、下の文では、一戸建てを買う行為(=人の意志が介在する)が行われた場所が鎌倉であることを読者に予想させるニュアンスです。

(2)モノの状態を表すときは「に」で受ける

  • 三連休の初日、すでに多くの車が料金所手前並んでいる。
  • 念願の一戸建てを鎌倉購入した。

上の文で、「車」はモノですから、意志によって並んでいるわけではないため「に」で受ける方が正しいです。そして、下の文では、買った一戸建ての所在地を鎌倉であると指定するニュアンスがあります。

ポイント4:「を」と「が」の揺らぎ

  • 私は水飲みたい
  • 私は水飲みたい

上記の文は、どちらも意味が通じます。このように複数の正解がある場合を「言葉(用法)の揺らぎ」などと言います。目的語のあとに置く助詞「を」と「が」については、以下のパターンでは「が」で受けた方がより語法に忠実なので、実際に文章を書く際は意識してみて下さい。

  1. 「欲しい」「飲みたい」などの希望(意志)
  2. 「吹ける」「扱える」「できる」などの可能(能力)
  3. 「好き」「悲しい」などの好き嫌い(感情)

なお、上記の3パターンに該当する場合でも、「水を飲みたいと言う」「お金を欲しいと書いた」などのように、あとに別の動詞が続くような場合は「を」で受けます。日本語はややこしいですね。

ポイント5:「なります」は全然丁寧じゃない

「こちらがメニューになります」というように、「なります」という文末表現は、主に話し言葉で定着した言葉です。一見、丁寧な印象がありますが、書き言葉には相応しくないので注意が必要です。

  • お世話にな(ってお)ります
  • 旧メールアドレスは、3月上旬で使えなくなります

上記のように、慣用句や、使えなく「なる」という状態変化について述べる場合は「なります」は問題ありません。

  • こちらがデザイン初稿にな(ってお)ります
  • このアイテムは当店のみでの取扱いになります

一方、上記の例の「なります」は、以下のように修正すべきです。

  • こちらがデザイン初稿です
  • このアイテムは当店のみでの取扱いです

このように、ちょっとしたポイントに気をつけながら文章を書くことを意識してみてはいかがでしょうか。「文章力アップ講座」では、目先のテクニックだけでなく、基本的な構文のトレーニングに取り組むことにより、文章力を高めることを目指しています。

2012年9月8日土曜日

モバイルデバイスの普及によって変わる「ライティングの作法」

以前、Webと雑誌の両メディアを運営している出版社に取材に行ったときのことです。同じコンテンツでもメディアに応じてタイトルや本文を再構成して編集すると語る担当者の方に、デバイスごとに、読者が興味を持つ記事の傾向にはどんな違いがあるのか聞いてみました。

曰く、Webでは、たとえば「ダイエット」であれば「血液型別ダイエットTips」というように、その場で気軽に消費できるコンテンツが好まれる傾向があります。そこで、タイトルはより拡散(TwitterによるRTやソーシャルブックマークなどを)されやすいように、キャッチーなものに付け替えるそうです。一方、紙メディアでは、「ダイエット」の基本が一から学べるよう、情報を体系立てて整理して知識を提供するというのが、コンテンツづくりの基本スタンスになるとのことです。

コンテンツはさらに「説明型」「話題消費型」に


特に、Webの台頭により重要性を増してきているのがタイトルと見出しです。Webコンテンツは、「検索に引っかかりやすく」「シェアされやすく」するために、どうしても「キーワードを盛り込んだ説明調に」「一読して内容に興味を持ってもらえるように」テキストを仕立てる必要があるからです。

「Webデザイナー初心者が配色スキルを高める7つの方法」

こんなタイトルを、Webの注目記事という文脈の中で目にすることが多いと思います。Web上でPVを稼ごうとすると、「Webデザイン」「デザイナー」「初心者」「配色」「スキル」「スキルアップ」「方法」といったキーワードで検索結果に表示させるために、どうしてもタイトルを「説明調」にせざるを得ないのです。

試しに、はてなブックマークの注目エントリのタイトルをいくつかピックアップしてみました。

「Webデザインの配色について学ぶときに読んでおきたい14の記事」
「ロゴデザインの参考になりすぎる厳選10サイト」
「帰宅後10分でできる!「夜遅めし」のお悩み解決50レシピ」
「スーツのジャケットをきれいにたたむ方法(動画あり)」

これらを見ると、「タイトルから本文の内容を容易に推察できること」「思わずクリックしたくなるような“引き”があること」がとても重要だということがわかります。つまり、いいか悪いかは別にして、コンテンツはどんどん「その場で」「気軽に」消費できるものへと変化しているということです。作り手として、このことを十分意識しておく必要があるでしょう。

モバイルにより意識すべきコンテンツの「可動性」


今後の作り手がもう一つ意識しておくことは「モバイルの台頭」です。「持ち運びが自在な」「非常にパーソナルな」モバイル端末により、パソコンのモニタを介して閲覧されることを前提に制作してきたコンテンツは、今後ますます、作り手の思いも寄らない場所で、シチュエーションで、方法で消費されていくことでしょう。

具体的には、一人が何台もの異なるデバイスを使って、様々な情報に接しているという状況が考えられます。こうした状況下で、作り手として、自分たちが配信する情報が、どういう経路で受け手に届き、どのようにリンクされ、シェアされ、拡散されていくのかということを常に頭において、ライティングを進めていく必要があるのです。

可動性の高いモバイル端末の普及により、コンテンツもどんどん可動性をもち、細分化されていくでしょう。これからのライティングは、そういった要素も頭に置きながら、タイトル、見出しといったコピーワーク、本文制作を進めていく必要があるのですね。